EIS(電気化学インピーダンス分光法)データの解析をシンプルに / 電気化学測定装置

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【計測事例】
Zahner Analysis(ザーナーアナリシス)でEISデータの解析をシンプルに

 本稿では、電気化学測定データの解析ソフトウェア: Zahner Analysis(ザーナーアナリシス)の、主にEIS解析機能について紹介します。


本ソフトウェアは、
・EISスペクトルの等価回路へのフィッティング
・サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果の評価
・ターフェル勾配の計算
・Butler-Volmer (BV)式の計算
など、様々な解析を、直感的な操作で行えるソフトウェアですが、今回は特にユーザーが多い、EISスペクトルの等価回路へのフィッティング機能(EISフィッティング)についてご説明します。



はじめに

 電気化学実験の評価は、複雑で難しいことがあります。
 EIS(電気化学インピーダンス分光法)は、バッテリー・燃料電池・キャパシター・腐食など様々な分野で電気化学反応特性を調べるのに広く使われますが、例えば、インピーダンススペクトルの等価電気回路(EEC)へのフィッティングは時に非常に煩雑で労力を要します。
 電気化学インピーダンス分光法(EIS)では、ナイキストプロット、ボードプロット、コール・コールプロットといった異なるグラフが使われます。適切なフィッティングには、シミュレーション曲線が、それらどのグラフでもインピーダンススペクトルに適合するようなフィッティングパラメータを探し出さなければなりません。しかし、ナイキストプロットには適合しても、ボードプロットやコール・コールプロットには適合しない、といったパラメータの組合せは無数に存在し、すべてのグラフに同時に適合するパラメータの組み合わせは(EECの場合)1つだけです。このような複雑により、電気化学結果を正しく評価するのは非常に難しいことがあります。
 そこで、電気化学測定の結果解析ソフトウェア: Zahner Analysisでは、等価回路モデルフィッティングをはじめ、さまざまな電気化学測定結果の評価を、非常にシンプルなプラットフォームで、より簡単に、直感的な操作で行えます。





Zahner Analysis EIS(電気化学インピーダンス分光法)解析機能の特長

●多彩な、視認性の良いグラフの作成
●等価回路モデルは、シンプルかつ直観的な操作で容易に作成が可能
●モデル中の各回路素子の影響度、フィッティング誤差も評価し、正確なモデル作成をサポート
●インピーダンススペクトルの補完(Z-HIT)も可能

ZahnerAnalysis_EIS02.webp


1.グラフ表示

測定したExcelデータはドラッグ&ドロップするだけで本ソフトに取り込む事ができ、即座にグラフ表示が可能です。


・Bode ・Nyquist Admittance ・Capacitance’ vs Frequency EIS spectrum (Nyquist plot)
・Nyquist ・-Nyquist Admittance ・Capacitance’’ vs Frequency
・-Nyquist ・Serial Capacitance  
・Complex vs Log Frequency ・Paralle Capacitance  
・Bode Admittance ・Complex Capacitance  

データ毎の色分けや複数データの比較など、視覚的に分かりやすいデータ表示を行うことができます。また、X軸及び2つのY軸において、それぞれ対数(log)、絶対値(abs)、逆数(inv)のスケーリング設定が可能で、目的に応じたグラフ作成が可能です。


2.等価回路モデルの作成

 等価回路作成では、各種回路素子のアイコンをドラッグ&ドロップで直観的に配置でき、複雑になった回路はワンタッチで自動整列できるため、スムーズに等価回路モデルの作成が可能です。さらに、作成した等価回路モデルはワンタッチでシミュレーショングラフで生成が可能です。
 本ソフトでは、以下の回路素子を使用する事が可能です。


・Resistor ・Finite diffusion ・Spherical diffusion
・Capacitor ・Homogeneous reaction impedance ・Surface relaxation impedance
・Inductor ・Constant phase element  
・Warburg impedance ・Young-Gohr impedance  
・Nernst diffusion    

_ZahnerAnalysis2_1.webp

3.フィッティング

 EISデータの解析では、測定されたインピーダンスペクトルデータを、測定対象を正確にシミュレートした等価回路にフィッティングさせる事が不可欠ですが、等価回路モデルを作成する際、素子の数を増やして、複雑な回路を作成してしまいがちです。
 本ソフトウェアには、モデル中の各回路素子が応答に与える影響(Significance)や誤差を評価できます。Significanceの値を参考に、要/不要な素子を整理できます。また、フィッティングの総誤差も評価できます。
 これらの機能も、正確な等価回路モデルへのフィッティングをより簡単にし、信頼性の高い結果を得るのに役立ちます。



4.インピーダンスデータの補完:Z-HIT

 EIS計測では、測定対象の安定性も重要ですが、特に低周波域の計測では、1回の測定に非常に時間がかかり、計測が難しいことがあります。例えば水中(液中)のコーティングされた試料を計測する際、時間の経過とともにコーティングは水分を吸収し、インピーダンスが低下してしまいます。
 一方、インピーダンスとは異なり、システムの位相は非常に安定しています。“Z-HIT”機能を使用すると、位相からインピーダンスを再構築することができます。さらに、測定が妨害された場合でもインピーダンスデータを補完できます。

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