【計測事例】
Squidstats を使用した燃料電池またはバッテリーのスタック測定
このアプリケーションノートでは、燃料電池またはバッテリーのスタックを、ポテンショスタットで電気化学測定をする際、直列接続と並列接続それぞれの注意点について説明します。
複数の燃料電池またはバッテリーがスタック内で接続されているものを測定したい場合、ユーザーは、動作中にスタック内の個々のセルで何が起こっているか、またはスタック全体で何が起こっているか把握する必要があります。 燃料電池、バッテリー、スーパーキャパシタなどの電気化学デバイスは、マルチセル構成で組み合わせることができ、各セルを個別に使用した場合よりも高いエネルギーと電力を提供できます。ユーザーは複数のポテンショスタットのチャンネルをスタックのさまざまな部分に接続して、システム全体の一部に注目して計測できます。 これを行うとき、直列接続と並列接続を使用する 2 つの基本的な方法があります。
直列接続
直列接続では、電極対の負極端子が隣接する電極対の正極端子に接続されます。合計電圧は、直列内の各セルペアの電圧の合計です。ただし、直列の各セルを流れる電流は同じ大きさ、方向になります。このため、直列に接続されたセルはガルバノスタティック(電流制御)モードでのみ動作させる必要があります。ガルバノスタティック(電流制御)モードでは、電流がポテンショスタットによって制御されて変動します。
当社の Squidstat ポテンショスタットと直列の電気化学デバイスをテストするための推奨構成を以下に示します。この構成では、セルのスタック全体はガルバノスタティック(電流制御)モードの Squidstat チャンネル1 によって制御されます。Squidstatチャンネル2および3は、オープンサーキットモードでのみ動作させる必要があります。
図1. 複数のチャネルをセルに直列に接続する回路図。 上記の例では、チャンネル1は定電流または電流制御の試験を実行してスタック全体を制御しています。 チャンネル2と3は開回路電位の試験を実行しています。このようにして、各セルの電圧降下を測定できます。 (WE: 作用電極、CE: 対極、RE: 参照電極、WSC: 作用電極センシングクリップ、WC: 作用電極クリップ、RC: 参照電極クリップ、CSC:対極センシングクリップ、CC:対極クリップ)
直列接続では、セルのスタックを組み合わせた合計電圧が、使用するポテンショスタットの電圧制限を超えないように注意する必要があります。例えば、現在のSquidstatポテンショスタットの標準モデルは最大制御電圧が±10Vです。より広い電圧範囲が必要なユーザーは、より高電圧対応の機種を使用する必要があります。
このとき、セル2と3に同じ電流値を設定することで、チャンネル2と3もガルバノスタティック(電流制御)モードで動作させていいように見えるかもしれません。
これは、CC が異なる電位になってしまい、各チャンネルのフィードバック制御を妨害する可能性があるため、適切に計測できません。よって、ポテンショスタットのうち1台、Squidstat1でのみ、電流を制御します。
並列接続
並列接続では、同じ極のすべてのセルの端子が互いに接続されます。 各セルの電圧は同じであり、スタックの合計電圧に等しくなります。 ただし、合計電流は各セルからのすべての電流の合計になります。
この構成では、ユーザーは各セルを流れる電流を把握したい、と 一見、各セルに同じ電位を設定し、電流を測定することで計測できるように思われるかもしれません。 しかし、あるセルに流れる電流は別のセルに流れる電流に影響を与えるため、各ポテンショスタット チャンネルのフィードバック制御を妨害してしまい、個々のセルの電流を適切に計測できません。よって、ポテンショスタティック(電位制御)モードであっても、複数のチャンネルと並列に接続されたセルが必ず干渉してしまいます。
構成全体を制御する単一のポテンショスタットチャンネルで、並列接続の複数のセルをテストするための推奨構成を以下に示します。
このセットアップでは、チャンネルはポテンショスタティック(電位制御)モード・ガルバノスタティック(電流制御)モードのどちらでも実行できます。ユーザーは、使用しているポテンショスタットの合計電流の制限を超えないよう注意する必要があります。より広い電流範囲が必要なユーザーは、大電流対応の機種を使用する必要があります。
図2. 複数のチャネルをセルに並列接続するための回路図。 1 つのセルからの電流がもう1つのセルを通って流れようとするため、ポテンショスタティック(電位制御)モードでセルを動作させても各セルを流れる電流を検出することはできません。 (WE:作用極、CE:対極、RE:参照電極、WSC:作用極センシングクリップ、WC:作用極クリップ、RC:参照極クリップ、CSC:対極センシングクリップ、CC:対極