【計測事例】~ラージスケールPIV~2.5m×1.5mのエリアをステレオPIVで測定しました。
大型境界層風洞で建物を模擬した立方体回りの流れをステレオPIVにより計測しました。
最新の高性能カメラと解析アルゴリズムの組み合わせにより、2.5m×1.5mのエリアを5mm/vectorの空間分解能で高精度に計測することができます。
光源には120mJダブルパルスレーザーを使用し、カメラ2台を前方散乱受光位置に配置することで比較的低出力光源でも広いエリアの計測が可能となります。
測定協力:清水建設株式会社様 技術研究所
【使用機材】
・カメラ:pco.4000-PIV×2台 11Mピクセル(4008×2672)
・レーザー:Solo 120XT 120mJ
・制御解析ソフト:Koncerto 3D
・解析アルゴリズム:イメージディフォーメーションコリレーション マルチグリッドコリレーション、中央差分法、ダブルコリレーション併用
・シーディング:PivPart45(ラスキンノズル)
・粒子サイズ:約2μm
・シーディング拡散法:シーディングレークによるローカルシーディング
【取得データ】
■ カメラ
高解像度高感度ダブルシャッタータイプのpco.4000-PIVを使用しました。このカメラの仕様は解像度が4008×2672ピクセル、階調が14bitモノクロ、冷却が⊿-45度です。
■ 解析アルゴリズム
イメージディフォーメーションコリレーションにマルチグリッドコリレーション、中央差分法、ダブルコリレーションを併用しました。マルチグリッドコリレーションにより2時刻間の粒子の移動量を適正に保ちつつインターロゲーションウィンドウを小さくして高解像度化が可能です。ダブルコリレーションによりS/N比の改善、中央差分法により2次精度の改善が可能です。さらにイメージディフォーメーション(サブピクセルの画像変形)を適用することでピークロッキングのない高精度の解析が可能となります。
■ シーディング
大型風洞におけるラージスケールPIVでは最も重要な技術です。シーディング発生装置はPivPart45を使用しました。この発生器はDEHS(またはDOS)というオイルをラスキンノズルで微粒化し、粒径2μm程度の粒子を大量に発生させることができます。DEHSは無害ですが、粒径が1μm以下では吸気した場合に肺の奥まで到達してしまいます。一方2μm以上だと気管支付近で壁面に接触し奥まで到達しないと言われています。人体へのインパクトを考えると2μm程度のサイズがよいと思います。
■ シーディングの拡散 シーディングレーク
PIV全般にいえることですが、シーディング粒子をいかに均一に拡散させるかが重要なポイントになります。均一に拡散させるためにはグローバルシーディング(風路全体に散布する)がもっともよい方法です。風洞の測定部の下流位置からシーディングを散布し続ければ風路全体がシーディングで満たされます。PivPart45なら大型風洞でも数分で計測可能な状態になります。しかしこの方法だと大量のシーディング粒子を長時間風路内に回流させることになり、風洞へのインパクトを考えるとできるだけ避けたほうがよいと思います。そこでシーディングレークと呼ばれるシーディング散布用多孔ノズルを使用します。シーディングレークは細孔をあけた細管を複数本組んだもので、整流洞直後に設置して散布することで、流れに影響を与えずに均一なシーディングが可能で、必要最小限のシーディング量で済ませることができます。