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LDVとは
LDVとは
レーザードップラー流速計(LDV)とは、2本のレーザーの交点に生じる干渉縞を、測定対象となる液体や気体が通過する際の周波数特性を元に流れ場の各ポイント毎の速度を非接触、高時間分解能計測が可能なシステムです。最新のシステムでは、レーザーを発光系側に内蔵しており、光軸調整不要で、速度キャリブレーションも不要なフルターンキー方式が主流です。
LDVは流体要素の速度そのものを測定するのではなく、流体中に混入された微粒子の速度を測定するものです。
微粒子が十分に小さく流体要素に追従して運動しているのであれば流体の速度を測定していることに等しくなります。
LDVはレーザー光を流体中に照射することによって微粒子から発生する散乱光を受光部(フォトマルチプライア)で受けこれを解析することによって微粒子の速度を求めます。
LDVの特徴として多次元測定も挙げられます。
LDVはビーム交差面に平行かつ光軸に垂直な速度成分のみを測定するから、同時に3方向の速度成分を測定すれば、シード粒子の速度ベクトルの大きさと方向を完全に知ることが出来ます。
そこで波長の異なるレーザー光をその交差面が互いに90°になるように、かつ同一の焦点を結ぶように導入する方法が取られています。
一般的にはレーザー光源としてAr-イオンレーザーを用い2次元計測では強度の高い514.5nm(緑色)と488.0nm(青色)の光を、3次元計測ではこれに476.5nm(紫色)の光をダイクロックミラー又はプリズムで分離して入射ビームとします。
散乱光にはこれら全ての波長が含まれているので、受光系は次元数だけフォトマルチプライアを用意し干渉フィルターで散乱光を十分に分離した後、波長ごとにフォトマルチプライアに導入します。
測定原理
レーザー光のコヒーレンス性を最大に生かす原理です。2本のレーザー光の交差したポイントに規則正しい明・暗のコントラストで出来た縞模様が生じます。これを干渉縞(Fringe)と呼びます。このFringeを間隔は一定の次式で求められます。
σ=λ/2sinθ
σ :干渉縞(Fringe)間隔 (um)
λ :レーザー光波長 (um)
2θ:2本のレーザーの交差角度
この2本のレーザー光の交差したポイントを流体中に混入された微粒子が通過すると干渉縞は美しいコントラストを描きます。
このコントラストを受光部(フォトマルチプライア)が検知し、電圧に変換するともともとレーザー光のもつGaussian特性(レーザー光自体のパワー特性であり、中心部が強くなっている。)から山なりになります。
これがドップラーバースト信号といわれるものです。
速度算出はこのドップラーバースト信号の山の部分をカウントすることによって得られます。
速度が遅い場合には広い幅の山なりの間隔になり、逆に速い場合には狭い幅の山なりの間隔になります。
干渉縞の間隔は一定ですので微粒子が通過するとある周波数特性をもった規則正しい山なりの信号が発生します。
この周波数から速度は次式で求められます。
V=σ*f
V:微粒子(流体)速度 (m/sec)
σ:干渉縞間隔 (um)
f:ドップラー信号周波数 (MHz)
レーザー光の交差点が測定体積であるが、ビームの太さの為に回転楕円体となります。
この領域(測定体積)を通過する粒子の速度を測定するので、測定体積の寸法がLDVの空間分解能を決定します。
収束レンズ焦点位置におけるビーム径Dfは次式で表わされます。
Df=4Fλ/πD1
F :収束レンズ焦点距離
λ:レーザー波長
D1:入射ビーム径
回転楕円体である測定体積の各寸法はビーム交差角度を2θとすると
Dx=Df/cosθ
Dy=Df
Dz=Df/sinθ
焦点距離Fを短くするか入射ビーム径D1を大きくすることによって測定体積を小さくすることが出来ます。
測定体積を小さくすることはLDVの空間分解能を高める為に重要です。
測定対象と光学系をあまり近づける事が出来ない場合にはビームエキスパンダー等を使い2本のビーム間隔及び入射ビーム径を大きくする手法を用います。
LDV信号処理とデータ処理
図は測定体積を通過する単一粒子からの散乱光に対する、フォトマルマルチプライアの出力信号のドップラーバースト信号です。
このうち大きな振幅を持つ高周波数成分の周波数(さらに周波数の大きいノイズを含む)がドップラー周波数です。
低周波数の振幅、すなわちペデスタル低周波数成分は測定体積の断面光強度分布がGaussian分布をしていることに基づきます。
ドップラーバースト信号は測定体積内を粒子が1個通過するたびに観察されますが、1つのバースト信号に含まれるドップラー周波数の波の数は、測定体積内にフリンジが幾つ存在するか、粒子が測定体積内のどの位置を通過したかで決まります。
測定体積内最大干渉縞数Nは次式で表わされます。
N=Dx/σ=4D/(πD1)
D :入射ビーム間隔
D1:入射ビーム径
ペデスタル低周波成分やノイズによる高周波成分は電気的フィルターで取り除かれる。
フィルター通過後の波形は図に示す様になりドップラー周波数の波だけが残るのでこれを周波数解析してfを求める。
この信号をドップラー信号と呼ぶ。
信号処理器の種類としては、従来よりトラッカ方式、カウンタ方式が知られてきたが、最近ではFFT方式、相関方式が主流となってきている。
(1)トラッカ方式
・F(周波数)―V(電圧)コンバーターを使用する。
・ドップラー信号の波形を方形型に整形後、内蔵された周波数の高いクロックパルスによって周期を測定し、周波数を求める。
(3)相関法式
・ドップラー信号の自己相関係数を求め、その周期からドップラー周波数を求める。
(4)FFT方式
・ドップラー信号を高速でA/D変換してFFT演算を行い、スペクトルのピーク周波数をドップラー周波数とする。